大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和63(オ)1543 判決

主 文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人藤井正博の上告理由第一点について

一 被上告人は、昭和六一年一〇月八日に破産宣告を受けていたが、原審口頭弁

論終結後の平成二年三月二八日に破産廃止決定があり、その後右決定が確定してい

る。

二 被上告人は上告人に対し、上告人から購入したパンティーストッキングに瑕

疵があったと主張して、本訴で、その損害賠償請求額の残額四〇七万四六〇〇円と

これに対する遅延損害金の支払を請求している。

三 右請求に対し、上告人は、次のとおり主張した。本件売買は商人間の取引で

あるから、買主である被上告人には、商品の引渡しを受けた時点で遅滞なくその検

査を行い、瑕疵があったときは、これを売主である上告人に通知すべき義務があっ

た。しかるに、被上告人は、昭和五四年九月二七日に上告人から目的物の引渡しを

受けその後相当の期間を経過したにもかかわらず、右通知を怠った。したがって、

被上告人は上告人に対し、本件損害賠償請求権を有しない。商法五二六条によれば、

商人間の売買において目的物に瑕疵があった場合、その損害賠償請求権は遅くとも

六か月以内に行使されなければならないが、被上告人は、本件売買による損害の最

終発生日である昭和五五年三月四日から三年以上も経過した昭和五八年一二月七日

に本件訴状を提出して本件損害賠償請求権を行使したのであるから、被上告人の本

訴請求は不適法である。

四 上告人の右主張に対し、原審は、被上告人は、昭和五四年一二月末ないし翌

五五年一月初めに本件売買目的物の転売先から通知を受けて瑕疵を発見し、直ちに

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上告人に対しその通知をしたとの事実を認定した上、商法五二六条は、商人間の売

買における買主の目的物に対する検査及び瑕疵ある場合の通知義務に関する規定で

あり、これを怠ったときは損害賠償を請求し得なくなるというものであって、権利

の不行使による損害賠償請求権の消滅に関する規定ではないから、商法五二六条を

根拠とする上告人の主張はそれ自体失当であるとして右主張を排斥し、請求に係る

損害金全額とこれに対する遅延損害金の一部を認容した一審判決を支持して、上告

人の控訴を棄却した。

五 しかし、原審の右判断は、是認することができない。その理由は、次のとお

りである。

商法五二六条は、商人間の売買における目的物に瑕疵又は数量不足がある場合に、

買主が売主に対して損害賠償請求権等の権利を行使するための前提要件を規定した

にとどまり、同条所定の義務を履行することにより買主が行使し得る権利の内容及

びその消長については、民法の一般原則の定めるところによるべきである。したが

って、右の損害賠償請求権は、民法五七〇条、五六六条三項により、買主が瑕疵又

は数量不足を発見した時から一年の経過により消滅すると解すべきであり、このこ

とは、商法五二六条の規定による右要件が充足されたこととは関わりがない。そし

て、この一年の期間制限は、除斥期間を規定したものと解すべきであり、また、右

各法条の文言に照らすと、この損害賠償請求権を保存するには、後記のように、売

主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利

行使をするまでの必要はないと解するのが相当である。

これを本件についてみるのに、原審の確定したところによれば、被上告人は昭和

五四年一二月末ないし翌五五年一月初めに、本件売買目的物に瑕疵があることを知

ったものであるところ、その瑕疵があったことに基づく損害賠償を求める本訴を提

起したのは、右の最終日から一年以上を経過した昭和五八年一二月七日であったこ

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とが記録上明らかである。そうすると、除斥期間の経過の有無について何ら判断す

ることなく、被上告人の請求を認容すべきものとした原判決には理由不備の違法が

あり、原判決はこの点において破棄を免れない。そして、右に説示したところによ

れば、一年の期間経過をもって、直ちに損害賠償請求権が消滅したものということ

はできないが、右損害賠償請求権を保存するには、少なくとも、売王に対し、具体

的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の

算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある。

本件についても、被上告人が売買目的物の瑕疵の通知をした際などに、右の態様に

より本件損害賠償請求権を行使して、除斥期間内にこれを保存したものということ

ができるか否かにつき、更に審理を尽くさせるため、上告人の民訴法一九八条二項

の裁判を求める申立てを含め、本件を原審に差し戻すこととする。

よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判

決する。

最高裁判所第三小法廷 裁判長裁判官 園

部 逸 夫

裁判官 坂 上 壽 夫

裁判官 貞 家 克 己

裁判官 佐 藤 庄 市 郎

裁判官 可 部 恒 雄

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