最高裁判所第二小法廷 平成10年(あ)148号 決定
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人株式会社東京量水器工業所及び同甲野太郎の弁護人浅岡輝彦の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり、被告人富士水道工業株式会社の弁護人山本剛嗣の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は量刑不当の主張であって、いずれも、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
なお、所論にかんがみ、職権により判断する。
原判決の認定によれば、水道メーターの販売等の事業を営む事業者二五社の各営業実務責任者らは、東京都が指名競争入札等の方法により発注する水道メーターの受注に関し、各社が従前の受注割合と利益を維持することを主要な目的とし、過去の受注実績を基に算出した比率を基本にして、幹事会社が入札ごとに決定して連絡する受注予定会社、受注予定価格のとおりに受注できるように入札等を行うことを合意したというのである。
このような本件合意の目的、内容等に徴すると、本件合意は、競争によって受注会社、受注価格を決定するという指名競争入札等の機能を全く失わせるものである上、中小企業の事業活動の不利を補正するために本件当時の中小企業基本法、中小企業団体の組織に関する法律等により認められることのある諸方策とはかけ離れたものであることも明らかである。したがって、本件合意は、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の目的(同法一条参照)に実質的に反しないと認められる例外的なものには当たらず、同法二条六項の定める「公共の利益に反して」の要件に当たるとした原判断は、正当である。
よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福田博 裁判官 河合伸一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山継夫 裁判官 梶谷玄)