最高裁判所第二小法廷 平成13年(行ツ)360号 判決 2002年3月01日
兵庫県芦屋市山手町7―20
上告人
若林輝雄
同訴訟代理人弁護士
南出喜久治
イタリア共和国 61032 フアノ (ペサロ) ロシアノ ヴイア フラミニア 128
被上告人
ガブリエラ・フラツテイニ・エス・ペー・アー
同代表者
ロベルト ボイアニ
同訴訟代理人弁理士
八木田茂
大岡啓造
上記当事者間の東京高等裁判所平成12年(行ケ)第286号審決取消請求事件について、同裁判所が平成13年8月30日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人南出喜久治の上告理由について
論旨は、審決等に対する訴えを東京高等裁判所の専属管轄とする商標法63条1項は憲法13条、14条、31条、32条、76条2項に違反するというものである。しかし、審級制度をどのように定めるかは憲法81条の規定するところを除いて専ら立法政策の問題であると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和22年(れ)第43号同23年3月10日大法廷判決・刑集2巻3号175頁、最高裁昭和22年(れ)第126号同23年7月19日大法廷判決・刑集2巻8号922頁、最高裁昭和23年(れ)第167号同年7月19日大法廷判決・刑集2巻8号952頁、最高裁昭和27年(テ)第6号同29年10月13日大法廷判決・民集8巻10号1846頁)。その趣旨に徴すると、商標法63条1項が憲法の上記各条項に違反するものでないことは明らかである。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 梶谷玄)
平成13年(行ツ)第360号
平成13年(行サ)第179号 審決取消請求上告事件
上告人 若林輝雄
被上告人 ガブリエラ・フラツテイニ・ソシエタ・ペル・アチオーニ
上告理由書
平成13年12月7日
最高裁判所 御中
上告人訴訟代理人 弁護士 南出喜久治
(憲法違反)
一1 商標法第63条は、特許法の場合と同様、本件訴訟のやうな審決取消訴訟といふ行政訴訟の一審の専属管轄を東京高等裁判所と定めてゐる。
2 しかし、これは専属管轄であると同時に、審級制限であることは明らかである。つまり、その不服申立は、高等裁判所を一審とするため、いはゆる三審制の原則の例外となつてゐることも明らかである。
二1 ところが、行政事件手続法によれば、一般の行政事件の抗告訴訟においては、処分の取消の場合も、審査請求による裁決の取消の場合であつても、三審制の原則は適用されているのである。
2 しかし、このやうな例外を認める根拠として、「特許関係事件の特殊性」を掲げるとすれば、特許権侵害による損害賠償請求訴訟では三審制が採られることとの均衡を欠くことになる。
3 また、次ぎに、その根拠として「特許庁の事門性」を掲げるとしても、いはゆる特別行政委員会による審査前置主義の制度においても、一般に三審制が採用されているのであつて、特許庁のみを特別扱ひとする根拠に乏しい。
4 そして、もし、特許庁の審決取消訴訟に二審制を採用する制度趣旨において、特許庁が一審裁判所の審理に匹敵するといふのであれば、それは、まづ、特別裁判所の設置禁止を定めた憲法第76条第2項に違反するのである。
三1 いづれにせよ、憲法第32条に定める裁判を受ける権利とは、その審級制度の態様を立法政策として自由裁量を与へるのではなく、その立法定立については、憲法第14条の定める法の下の平等といふ覊束裁量下にあるものである。
2 そして、そのことが憲法第13条及び第31条で定める適正手続の保障なのであつて、特許庁の審決について審級の利益を他と差別して国民に特別の制限を課すのは、「立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」とするこれらの条文に違反する。