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最高裁判所第二小法廷 平成17年(あ)1840号 判決 2009年6月05日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人Aの弁護人村木一郎の上告趣意のうち,憲法13条,36条違反をいう点は,その執行方法を含む死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,憲法37条2項違反をいう点は,刑訴法321条1項1号後段の規定が憲法の同条項に違反しないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和25年(し)第16号同年10月4日大法廷決定・刑集4巻10号1866頁)とするところであり,刑訴法321条1項2号後段の規定が憲法の同条項に違反しないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和23年(れ)第833号同24年5月18日大法廷判決・刑集3巻6号789頁)の趣旨に徴して明らかであるから,理由がなく(最高裁昭和29年(あ)第154号同30年11月29日第三小法廷判決・刑集9巻12号2524頁参照),その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

被告人Bの弁護人植松功,同内山成樹,同大熊裕起の上告趣意のうち,憲法31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは上記のとおりであるから,理由がなく,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

被告人B本人の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお,所論にかんがみ検討しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。

付言すると,被告人両名は,夫婦で共同して犬の繁殖販売業を営んでいたものであるが,本件は,(1) 被告人両名が,共謀の上,外国犬を不当な価格で購入させられたことに気付いて売買代金の返還等を要求してきたCを,硝酸ストリキニーネを詰めたカプセルを飲ませて毒殺し,Dとも共謀の上,Cの死体を解体し焼損して投棄し,(2) 被告人両名が,共謀の上,被告人両名のC殺害を薄々察知して財産的な要求を繰り返してきたEを,その付き人であるFもろとも,硝酸ストリキニーネを詰めたカプセルを飲ませて毒殺し,Dとも共謀の上,両名の死体を解体し焼損して投棄し,(3) 被告人Aが,Gにしていた出資話が虚偽であることが露見して紛議が発生することを防止しようなどと考え,Gを,硝酸ストリキニーネを詰めたカプセルを飲ませて毒殺し,Dと共謀の上,Gの死体を解体し焼損して投棄したという,殺人,死体損壊・遺棄の事案である。いずれの犯行も計画的なもので,動機に酌量の余地はなく,各被害者に猛毒の硝酸ストリキニーネを詰めたカプセルを栄養剤であるなどと偽って飲ませ,苦もんのうちに中毒死させた上,その死体を切り刻み焼却して,山や川に捨てるという犯行態様も,冷酷無慈悲で悪質極まりないものである。被告人Aにおいては4名の,被告人Bにおいては3名の生命を奪い,その死体を損壊・遺棄したという結果は誠に重大である。被告人両名は,不合理な弁解を繰り返しており,真しな反省の態度も認められない。これらの事情に加え,各遺族の被害感情,本件が社会に与えた影響等に照らすと,被告人Aは,科料の前科があるのみであること,被告人Bは,上記(1)の実行行為には関与していないこと,前科がなく,被告人Aと出会うまでは問題のない社会生活を送っていたことなどの事情を考慮しても,被告人両名の罪責は極めて重大であり,被告人両名を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は,当裁判所もこれを是認せざるを得ない。

よって,被告人Aにつき,刑訴法414条,396条により,被告人Bにつき,同法414条,396条,181条1項ただし書により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

検察官幕田英雄 公判出席

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 今井功 裁判官 中川了滋 裁判官 竹内行夫)

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