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最高裁判所第二小法廷 平成20年(あ)1224号 判決 2011年3月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人中道武美の上告趣意のうち,憲法13条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度がその執行方法を含め憲法のこれらの規定に違反しないことは当裁判所の判例(最高裁昭和22年(れ)第119号同23年3月12日大法廷判決・刑集2巻3号191頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和32年(あ)第2247号同36年7月19日大法廷判決・刑集15巻7号1106頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。被告人本人の上告趣意のうち,憲法9条,31条,36条違反をいう点は,死刑制度が憲法のこれらの規定に違反しないことは,当裁判所の判例(前記各大法廷判決及び最高裁昭和24年新(れ)第335号同26年4月18日大法廷判決・刑集5巻5号923頁)とするところであるから,理由がなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお,所論に鑑み記録を調査しても,刑訴法411条を適用すべきものとは認められない。

付言すると,本件は,被告人が,その友人らにおいて被害者Aらとトラブルとなり同人らから暴行を受けるなどしたことを聞き,その友人らを説得し,さらに,他の者も巻き込むなどして,報復を企て,これら共犯者らと共謀の上,被害者らをおびき出し,(1) 被害者A及び同Bに対しそれぞれ暴行を加えて傷害を負わせ,(2) 被害者Cに対し集団による暴行を加え,(3) 被害者らをそれぞれ監禁し,(4) その間,単独で,被害者Aから同人所有の現金在中の財布を,同Cからその所持する同B所有の現金在中の財布をそれぞれ強取し,(5) 警察への発覚を恐れて,口封じのため被害者Aを生き埋めにして殺害し,(6) さらに,被害者Bについても,警察への発覚や同人の知り合いの暴力団関係者からの報復を恐れ,翌日,口封じのため生き埋めにして殺害したという傷害,暴力行為等処罰に関する法律違反,監禁,強盗,殺人の事案である。

量刑上重視すべき各殺人の事実を中心にその情状についてみると,被告人は,短絡的かつ暴力肯定的な発想から共犯者のトラブルに積極的に介入し,渋る共犯者を説得するなどして被害者らに対する報復を企て,その挙げ句,口封じのため安易に殺人に及んだのであって,その動機,経緯に酌量すべき点は認められない。その態様も,被害者らをおびき出し,多勢を背景に,被害者Aに対し,ゴルフクラブなどを使用して執ように暴行を加えた上,重篤な傷害を負った同人を産業廃棄物集積場にショベルカーで穴を掘って生き埋めにして殺害したという誠に残虐非道なものであり,被害者Bに対しても,同様に特殊警棒を使用するなどして一方的に暴行を加え,長時間にわたって監禁した上,同人の顔面をビニール袋で覆い,その上からガムテープで目隠しするなどして,同集積場にショベルカーで穴を掘って生き埋めにして殺害したというこれまた極めて残虐非道なものである。被告人は,少年を含む共犯者らを巻き込んで本件各犯行を主導し,自ら率先して各実行行為に及んでおり,果たした役割は極めて大きい。その結果も,2名の尊い生命を奪っており,誠に重大である。遺族らの被害感情は極めて厳しい。

そうすると,被告人は若年で,少年時代の前歴1件があるにとどまること,第1審では強盗を除くその余の事実関係を認め,原審以降は事実関係をおおむね認め反省の態度を示していることなど,被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任は極めて重大であり,原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は,やむを得ないものとして当裁判所もこれを是認せざるを得ない。

よって,刑訴法414条,396条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

検察官長崎誠 公判出席

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦)

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