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最高裁判所第二小法廷 平成20年(あ)1654号 判決 2009年12月11日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

1  被告人両名の弁護人落合洋司の上告趣意のうち,神奈川県青少年保護育成条例(以下「神奈川県条例」という。)11条1項,30条3項4号(平成17年神奈川県条例第36号による改正前のもの),30条3項6号,31条及び平成19年群馬県条例第19号による改正前の群馬県青少年保護育成条例(以下「群馬県条例」という。)18条1項,42条3号,46条の各規定並びにその適用の憲法21条1項,22条1項違反をいう点について

神奈川県条例及び群馬県条例(以下「本件各条例」という。)の定めるような有害図書類又は有害がん具類(以下「有害図書類等」という。)が,一般に思慮分別の未熟な青少年の性に関する価値観に悪い影響を及ぼすなどして,青少年の健全な育成に有害であることは社会共通の認識であり,これを青少年に販売することには弊害があるということができる。自動販売機によってこのような有害図書類等を販売することは,書店等における対面販売よりもその弊害が大きいといわざるを得ない。本件のような電気通信設備を用いて送信された画像を通して監視センターにおいて監視する機能を備えた販売機であっても,原判決及びその是認する第1審判決が認定する監視及び販売の態勢等からすれば,青少年に有害図書類等が販売されないことが担保されているとはいえない。以上の点からすれば,本件のような販売機を含めて自動販売機に有害図書類等を収納することを禁止する必要性が高いということができる。有害図書類等の「自動販売機」への収納を禁止し,その違反に対し刑罰を科すことは,青少年の健全な育成を阻害する有害な環境を浄化するための必要やむを得ないものであって,憲法21条1項,22条1項に違反するものではない。このように解することができることは,当裁判所の判例(昭和28年(あ)第1713号同32年3月13日大法廷判決・刑集11巻3号997頁,昭和39年(あ)第305号同44年10月15日大法廷判決・刑集23巻10号1239頁,昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻9号586頁,昭和43年(行ツ)第120号同50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁,昭和57年(あ)第621号同60年10月23日大法廷判決・刑集39巻6号413頁)の趣旨に徴し明らかである(最高裁昭和62年(あ)第1462号平成元年9月19日第三小法廷判決・刑集43巻8号785頁,最高裁平成19年(あ)第1594号同21年3月9日第二小法廷判決・刑集63巻3号27頁参照)。以上のとおりであり,原判決に所論の憲法違反はなく,論旨は採用することができない。

2  その余の上告趣意のうち,憲法94条違反をいう点は,本件各条例にいう「自動販売機」の概念が所論のように不合理又は不明確であるということはできないから,前提を欠き,その余は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

3  よって,刑訴法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川了滋 裁判官 今井功 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫)

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