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最高裁判所第二小法廷 平成20年(さ)3号 判決 2009年3月16日

主文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理由

水戸簡易裁判所は,平成19年12月25日,「被告人は,昭和40年法律第96号附則第2条第1項,第3項,同5条第5項により,運転できる普通自動車は,公安委員会の行う審査に合格するまでの間は,従来の規定による自動三輪車及び軽自動車(総排気量360cc以下)に限るとされている公安委員会の運転免許を受けている者であるが,平成19年12月6日午後3時20分ころ,水戸市ab丁目c番d号付近道路において,運転できることとされている普通自動車以外の普通自動車である普通貨物自動車(軽四)を運転したものである。」との事実を認定した上,道路交通法117条の4第2号,64条,昭和40年法律第96号附則2条4項,刑法18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金20万円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,平成20年1月9日確定した。

しかしながら,一件記録によると,被告人は,公安委員会の行う審査に合格するまでの間は,運転できる普通自動車は自動三輪車及び軽自動車(360cc以下)に限るとする普通免許を有していた者であるところ,上記以外の普通自動車を運転する行為については,平成16年法律第90号による道路交通法の改正により,平成19年6月2日をもって,これを無免許運転とみなす旨規定していた昭和40年法律第96号附則2条4項が削られ,無免許運転ではなく,反則行為である道路交通法91条の免許条件違反とされるに至った。したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。しかるに,水戸区検察庁検察官事務取扱検察事務官は上記の反則行為に関する処理手続を経由しないまま公訴を提起したのであるから,水戸簡易裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず,前記公訴事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることは明らかである。

よって,本件非常上告は理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

検察官長谷川高章 公判出席

(裁判長裁判官 竹内行夫 裁判官 今井功 裁判官 中川了滋 裁判官 古田佑紀)

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