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最高裁判所第二小法廷 平成21年(し)302号 決定 2009年9月29日

主文

原決定を取り消す。

被告人Aに対する公職選挙法違反被告事件に係る刑事確定訴訟記録について,平成21年6月3日名古屋地方検察庁検察官が申立人に対してした閲覧一部不許可処分を取り消す。

名古屋地方検察庁検察官は,申立人に対し,上記記録中,上記不許可処分に係る部分を閲覧させなければならない。

理由

本件抗告の趣意は,違憲をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,刑事確定訴訟記録法(以下「法」という。)8条2項,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。

所論にかんがみ,職権で判断する。

本件は,被告人Aに対する公職選挙法違反被告事件に係る再審請求事件の弁護人に選任された申立人が,再審請求のための記録確認を目的として,上記被告事件に係る刑事確定訴訟記録(以下「本件保管記録」という。)の閲覧請求をしたのに対し,名古屋地方検察庁検察官が,本件保管記録中,被告人の戸籍,関係人の身上,被告人の姉名義の口座の番号及び現在高等に係る部分(以下,併せて「本件記録部分」という。)について,法4条2項5号に当たるとして,閲覧を不許可とした(以下「本件閲覧一部不許可処分」という。)ので,申立人が準抗告を申し立てたという事案である。原決定は,本件記録部分につき同号所定の閲覧制限事由が認められるとした上で,申立人は,法4条2項ただし書にいう「訴訟関係人」にも「閲覧につき正当な理由があると認められる者」にも該当しないとして,準抗告の申立てを棄却した。

しかしながら,再審請求人により選任された弁護人が,再審請求のための記録確認を目的として,当該再審請求がされた刑事被告事件に係る保管記録の閲覧を請求した場合には,同弁護人は,法4条2項ただし書にいう「閲覧につき正当な理由があると認められる者」に該当するというべきであり,保管検察官は,同項5号の事由の有無にかかわらず,保管記録を閲覧させなければならない。そうすると,原裁判所は,本件閲覧一部不許可処分を取り消し,本件記録部分を申立人に閲覧させるよう命ずる裁判をすべきであったのであり,原決定には決定に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあって,これを取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。

よって,法8条2項,刑訴法411条1号,434条,426条2項により,原決定を取り消した上,更に本件閲覧一部不許可処分を取り消し,本件記録部分を申立人に閲覧させることとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 今井功 裁判官 中川了滋 裁判官 竹内行夫)

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