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最高裁判所第二小法廷 平成21年(行ヒ)65号 判決 2010年10月15日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鳥飼重和ほかの上告受理申立て理由について

1  本件は,上告人が,その母の死亡により相続した財産に係る相続税の申告をしたところ,同人が生前に提起して上告人が承継していた所得税更正処分等の取消訴訟において同処分等の取消判決が確定したことから,上記母が同処分等に基づき納付していた所得税等に係る過納金が上告人に還付され,所轄税務署長から上記過納金の還付請求権は相続財産を構成するとして上記相続税の更正処分を受けたため,上告人において,同還付請求権は相続開始後に発生した権利であるから相続財産を構成しないと主張して,同処分の一部の取消しを求めている事案である。

2  所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消判決が確定した場合には,上記各処分は,処分時にさかのぼってその効力を失うから,上記各処分に基づいて納付された所得税,過少申告加算税及び延滞税は,納付の時点から法律上の原因を欠いていたこととなり,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,納付の時点において既に発生していたこととなる。このことからすると,被相続人が所得税更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分に基づき所得税,過少申告加算税及び延滞税を納付するとともに上記各処分の取消訴訟を提起していたところ,その係属中に被相続人が死亡したため相続人が同訴訟を承継し,上記各処分の取消判決が確定するに至ったときは,上記所得税等に係る過納金の還付請求権は,被相続人の相続財産を構成し,相続税の課税財産となると解するのが相当である。

以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)

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