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最高裁判所第二小法廷 平成22年(さ)1号 判決 2010年3月29日

主文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理由

小倉簡易裁判所は,平成20年12月5日,「被告人は,平成20年9月26日午後3時8分ころ,佐賀県唐津市半田国道497号上り7.5キロポスト付近道路において,法定の最高速度(60km毎時)を39km毎時超える99km毎時の速度で普通貨物自動車を運転して進行したものである。」との事実を認定した上,道路交通法22条1項,118条1項1号,同法施行令11条,刑法18条,刑訴法348条を適用して,被告人を罰金5万円に処する旨の略式命令を発付し,同略式命令は,同年12月25日確定した。

しかしながら,一件記録によると,本件違反場所は,自動車専用道路の指定を受けていた区間内にあるから,被告人の速度超過は,道路交通法125条1項により反則行為となると認められる。したがって,被告人に対しては,同法130条により,同法127条の通告をし,同法128条の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。しかるに,小倉区検察庁検察官事務取扱検察事務官が上記の反則行為に関する処理手続を経由しないまま公訴を提起したのであるから,小倉簡易裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず,前記公訴事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であることが明らかである。

よって,本件非常上告は理由があるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)

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