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最高裁判所第二小法廷 平成22年(す)463号 決定 2010年12月20日

主文

本件請求を棄却する。

理由

本件請求は,第1審において懲役刑の実刑判決を受けた後保釈されていた者が,控訴棄却判決を受けた後,判決確定までの間に逃亡していたとして,検察官において刑訴法96条3項の適用ないし準用により保釈保証金の没取を求めるものである。

記録によれば,被請求人は,大阪地方裁判所において詐欺被告事件につき懲役2年6月の判決を受けた後,控訴する一方,保釈許可決定を受けて釈放されたが,平成22年1月29日大阪高等裁判所において控訴棄却判決を受けたこと,同判決に対して上告したが,控訴棄却判決後の保釈請求が却下された後も勾留のための呼出しに応じず,同年3月5日頃から所在不明となっていたこと,同年7月20日に身柄を確保されて収容されると,同月21日に上告を取り下げ,その収容中に判決が確定して刑の執行が開始されたことが認められる。

刑訴法96条3項は,その文理及び趣旨に照らすと,禁錮以上の実刑判決が確定した後に逃亡等が行われることを保釈保証金没取の制裁の予告の下に防止し,刑の確実な執行を担保することを目的とする規定であるから,保釈された者が実刑判決を受け,その判決が確定するまでの間に逃亡等を行ったとしても,判決確定までにそれが解消され,判決確定後の時期において逃亡等の事実がない場合には,同項の適用ないし準用により保釈保証金を没取することはできないと解するのが相当である。

したがって,本件請求は理由がないから,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 千葉勝美)

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