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最高裁判所第二小法廷 平成22年(ク)376号 決定 2010年8月04日

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人池田崇志ほかの抗告理由について

民事事件について特別抗告をすることが許されるのは,民訴法336条1項所定の場合に限られるところ,本件抗告理由は,違憲をいうが,その実質は原決定の単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない。

なお,人身保護法11条1項にいう「請求の理由のないことが明白なとき」とは,人身保護規則21条1項1号から5号までに規定する場合のほか,これらに準ずる程度に請求に理由のないことが明白な場合(同項6号)に限られる。本件は,子の父親である抗告人が子を拘束している母親及びその両親である相手方らに対して人身保護法に基づき子の引渡し等を求める事案であるところ,抗告人は,アメリカ合衆国ウィスコンシン州ミルウォーキー郡巡回裁判所の確定判決により子の単独監護権者に指定され,原決定によれば,上記確定判決は民訴法118条各号所定の外国判決の承認の要件を満たしているというのであって,その他の当事者の主張内容等に照らしても,被拘束者を請求者の監護の下に置くことが拘束者の監護の下に置くことに比べて子の幸福の観点から著しく不当なものであることが一見して明らかであるとすることはできない(最高裁平成6年(オ)第1437号同年11月8日第三小法廷判決・民集48巻7号1337頁参照)。そうであれば,原審は,本件請求につき,決定によりこれを棄却するのではなく,審問手続を経た上で,判決により,その判断を示すべきであったといわざるを得ない。しかし,原決定にこのような問題がある場合であっても,上級審においてこれを是正するのではなく,改めて請求がされたときにこれを審理する裁判所において審問手続を経た判断が行われることが,法の予定するところである。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦)

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