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最高裁判所第二小法廷 平成24年(さ)21号 判決 2012年9月28日

主文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理由

大分簡易裁判所は,同裁判所平成23年(い)第919号道路交通法違反被告事件において,同年11月30日,被告人を罰金4万円に処する旨の略式命令を発付し,同命令は,同年12月15日に確定した。

しかしながら,一件記録によると,原略式命令は,同年11月30日付け起訴状による略式命令の請求に対して発付されたものであるところ,同起訴状に起訴検察官として検察官事務取扱検察事務官である旨表示された検察事務官は検察官事務取扱の職務命令の発令を受けていなかったことが認められ,同起訴状は真正に権限ある者によって作成されていなかったことが明らかである。したがって,本件略式命令の請求は,公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であり,同裁判所としては,刑訴法463条1項,338条4号により公訴棄却の判決をすべきであった。そうすると,同裁判所が原略式命令を発付したことは,同法454条の「事件の審判が法令に違反したこと」に当たると解するのが相当である。

よって,本件非常上告は理由があり,原略式命令は,法令に違反し,かつ,被告人のため不利益であるから,刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,同法338条4号により本件公訴を棄却することとし,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

検察官谷川恒太 公判出席

(裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 竹内行夫 裁判官 須藤正彦 裁判官 小貫芳信)

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