最高裁判所第二小法廷 平成3年(あ)143号 決定 1991年4月15日
本籍
東京都新宿区上落合二丁目五四三番地
住居
同 新宿区上落合二丁目二四番一一号
弁理士
中島宣彦
大正四年八月二三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、平成二年一二月五日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人和田衛の上告趣意は、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 香川保一 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)
平成三年あ第一四三号
被告人 中島宣彦
○ 上告趣意書
右の者に対する所得税法違反被告事件について、弁護人の上告の趣意は次のとおりである。
平成三年三月一三日
弁護人 和田衛
最高裁判所第二小法廷 御中
記
本件上告理由は、原判決の認定には、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認かあり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する(刑事訴訟法四一一条三号)というにある。
本件の控訴審では、上告人の株式取引の状況や課税要件についての認識や検察官の取り調べ状況等控訴趣意書における弁護人の主張を再度の被告人質問により、明らかにする予定であったが、上告人の病気のため被告人質問を実施できずに、結審せざるを得なかったものである。
したがって、本件証拠関係は、第一審のままであるが、これらの証拠関係によっても、弁護人がこれまで一審、控訴審を通じて述べてきたとおり、原判決の認定には重大な事実誤認があると思料する。
すなわち、控訴趣意において詳述したと同様の理由により、原判決には、<1>ほ脱所得金額のうち、有価証券譲渡益による雑所得分について、課税要件を充たしていないものがあること、<2>仮に客観的には課税要件を充たしているとしても、上告人には課税要件の充足についての認識が欠けるものがあること、の二点において、重大な事実誤認があるものと確信する。
したがって、これらの点について、再度上級審の御判断を仰ぎたく上告した次第である。
以上