最高裁判所第二小法廷 平成3年(行ツ)13号 判決 1991年7月19日
前橋市勝沢町一八〇番地
上告人
高橋信一
右訴訟代理人弁護士
吉村駿一
同弁理士
河野茂夫
東京都立川市錦町四丁目一一番二一号
上告人
安田睦彦
新潟県長岡市豊二丁目一三番三号
被上告人
高橋芳彦
右当事者間の東京高等裁判所昭和六二年(行ケ)第一六三号審決取消請求事件について、同裁判所が平成二年九月二六日言い渡した判決に対し、上告人高橋信一から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告人高橋信一代理人吉村駿一の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。その過程にも所論の違法はなく、所論引用の判例に抵触する点も存しない。論旨は、採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 藤島昭 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平)
(平成三年(行ツ)第一三号 上告人 高橋信一 外一名)
上告人高橋信一代理人吉村駿一の上告理由
一、審決取消訴訟における審理範囲は、審判において主張・判断を経た特定の無効原因に限定される(最高大昭五一・三・一〇判、民集三〇巻二号七九頁)のが判例であるところ、被上告人は突脈の側面に関して引用例で一切記載しておらず、図面にも説明文にも側面に関する記述は一切ない。
又、作用効果についても、実施例に見られる程度の傾斜によっては所期の目的・効果を達成できないことについて主張・立証していない。そのうえで上告人の登録実用新案における突脈の傾斜に関する構成が技術的に無意味ということはできず、引用例の技術と同一、又はこれに基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたとはいえないと審決されたのである。原判決は審理の対象を誤った判例違反がある。
二、ところが、原判決は引用例記載のものの突部が実施例の形状に限られる記載がないとして、突部の側面につき明示の記載こそないが少なくとも基部の円座に対して垂直な側面の存在を示唆していると認定した。これは一〇〇%推論であり、無から有を生じさせたものである。そして更に推論を重ねて引用例に示唆された突部の垂直な側面も、垂直に限定されず、先端部が押圧するものである以上突部の形状を基部から稜に向かって僅かに幅を狭めることは常識的だといい、この程度は当業技術者が容易にすることのできる設計変更にすぎないと判旨した。
しかし、側面を急傾斜に形成して急傾斜相互間にはさまれ、圧迫されることによりつねる効果を生ずることは新規の考案であり、決して常識的なことでばなく、急傾斜の形成は容易な設計変更などではない。原判決は推論を重ねてつねる効果の新規性を否定する判断の誤りを犯している。
前述の通り被上告人は重要な側面に関する記述自体をしていないことを併せると原判決は破棄を免れない。
以上