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最高裁判所第二小法廷 平成4年(行ツ)25号 判決 1992年9月25日

上告人

白浜栄一

右訴訟代理人弁護士

吉岡良治

被上告人

阿倍野労働基準監督署長平井肇

右指定代理人

小山田才八

右当事者間の大阪高等裁判所平成三年(行コ)第二三号障害補償給付支給決定取消請求事件について、同裁判所が平成三年一二月一一日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉岡良治の上告理由について

原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、所論の点に関する原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、独自の見解に立って原判決を論難するものであり、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中島敏次郎 裁判官 藤島昭 裁判官 大西勝也)

(平成四年(行ツ)第二五号 上告人 白浜栄一)

上告代理人吉岡良治の上告理由

一、原判決は、労災保険法施行規則一四条四項の解釈適用を誤ったものであり、判決に影響をおよぼすことが明らかな法令の違背がある。

二、原判決の要約

原判決は、一審判決をそのまま維持したものであり、次の通りである。即ち組合せ障害はその部位について最上位の障害で、代替機能を完全に喪失した場合の特別の取扱いであり、本件に適用することはできない。

また、労災保険法施行規則一四条四項(障害の程度に応じた身体障害に準じた等級認定規定)の適用もないから、組合せ障害に準じることもできない、というものである。

三、本件の論点

本件は単純な事件である、左踵骨骨折により九級の認定を受けた障害者が、さらに右足に同じ骨折をうけた。残された足について、左足の時のように同じ評価でよいのか、あるいは身体全体からみてその機能を増した右足をそのままとらえて評価すべきではないのか、ということである。

四、原判決への批判

上告人は原判決が掲載するような規則や通達の存在を知っている。しかし、規則も通達も右の事情をふまえて解釈すべきことを主張しているのである。労災保険法の目的は「労働者の福祉の増進」なのである。

<1> まず、原判決が掲げている組合せ障害の規定は「解釈例規」(昭和50・9・30基発第五六五号)であり、法律でも規則でもない。

それはいわば官庁内部のとりきめごとであり、拘束力はない。肝心なことは左足障害者の右足の重要性をふまえて、どのように障害等級として把握するかである。

<2> また、通達が言う組合せ障害が、原判決が認定するように「その部位についての最上位の障害で、代替機能を完全に喪失した場合の特別の取扱いである」かは疑問である。通達は加重として取り扱うものとして「(イ)両上肢の欠損または機能障害(第一級の六、第一級の七、第二級の三)、(ロ)両手指の欠損または機能障害(第三級の五、第四級の六)、(ハ)両下肢の欠損又は機能障害(第一級の八、第一級の九、第二級の四、第四級の七)、(ニ)両足指の欠損又は機能障害(第五級の六、第七級の八)、(ホ)両眼瞼の欠損又は運動障害(第九級の四、第一一級の二、第一三級の三)」を掲げているが、

・ それぞれの身体障害について、通達自身最上位のものでないものをも、加重として取り入れていること。

・ また機能的にみて、両足指全部の欠損により本件のような両足踵骨骨折の方が劣ること(現在の障害等級表がかならずしも労働能力の喪失度とは比例していないと批判されている)。

・ また労働保険法施行規則が組合せ障害には適用しない、という原判決の解釈は全くの独断で、むしろ規則から通達をみなおすべきであること。

五、以上、本件は一定の足指の全部を失った場合と同様に障害等級五級とみるべき、労働基準監督署の認定は取り消すべきである。

以上

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