最高裁判所第二小法廷 平成6年(あ)465号 決定 1994年6月22日
本店所在地
北九州市八幡東区山路一丁目一五七六番地の三
共祐産業株式会社
右代表者代表取締役
倉石智
本籍
福岡県前原市大字前原二八三番地
住居
北九州市小倉北区熊本三丁目一六番一-六一二号
会社役員
倉石智
大正一一年九月一一日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、平成六年三月二四日福岡高等裁判所が言い渡した判決に対し、各被告人から上告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人塚田武司、同林桂一郎の上告趣意は、量刑不当の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。
よって、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治)
平成六年(あ)第四六五号法人税法違反被告事件
○ 上告趣意書
被告人 共祐産業株式会社
代表者 倉石智
被告人 倉石智
右被告人両名に対する標記被告事件についての上告の趣旨は左記のとおりである。
平成六年六月一日
弁護人 塚田武司
同 林桂一郎
最高裁判所第二小法廷 御中
記
第一点 原判決は、刑の量定が甚だしく不当であり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
一 原判決は、第一審(福岡地方裁判所)が被告人共祐産業株式会社を罰金二五〇〇万円、被告人倉石智を懲役一年六月、執行猶予三年に各処する旨の判決に対する被告人両名からの量刑不当を理由とする各控訴申立てについて、いずれも理由がないとして各控訴を棄却する判決を言渡した。
しかし、左の情状を考慮すると、右原判決の量刑は甚だしく不当であり、これを破棄しなければ著しく正義に反するものである。
二 本件事案の犯情として、被告会社の裏金を増やして事業の活性化を図ろうとしたのが動機ではあるが、全てが私利私欲にでたものではなく、また、所得隠しの手段としても、被告会社の不動産取引を他人名義で行ったり、不動産取引に架空の仲介手数料を計上するなどの方法で、これによって秘匿した所得を被告人倉石智の個人名義や仮名の普通預金、定期預金などにして保管していたものであって、格別に複雑、巧緻とはいえず、悪質性を強調できる事案ではない。
三 (被告人共祐産業株式会社について)
被告会社は、不動産の売買及び仲介等を目的とする株式会社であるが、原判決がその量刑を支持する第一審判決は、平成元年三月一日から同二年二月二八日までの事業年度のほ脱税額九七五一万九六〇〇円について二五〇〇万円の罰金刑に処した。その割合は二割五分六厘もの高率である。これに加えて被告会社はすでに国税局等に同年度分として約一億五〇〇〇万円もの追徴税等を支払っているほか前二年度分として約五五〇〇万円の追徴税等を完納しているのであるから、これに右罰金刑二五〇〇万円を支払うことになればあまりにも厳しすぎる罰金刑の量刑である。
四 (被告人倉石智について)
原判決は、被告人倉石智に対し、検察官の求刑どおり懲役一年六月の刑に処し、三年間右刑の執行に猶予する旨の第一審判決の量刑を相当とした。
しかし、第一審の弁論要旨で指摘しているとおり、被告人倉石智には再犯のおそれがないこと、七一才の高齢のうえ多々健康上の不安を抱えていること、余生を平穏に過ごしたいなど考えると刑の拘束からできるだけ早期に解放すべきものである。
五 以上のとおり、原判決の被告会社及び被告人倉石智に対する刑の量定は甚だしく不当であり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものである。