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最高裁判所第二小法廷 平成7年(オ)2147号 判決 1998年7月17日

東京都足立区綾瀬二丁目二七番七号

上告人

精工研株式会社

右代表者代表取締役

工藤勝弥

右訴訟代理人弁護士

久江孝二

宮瀬洋一

東京都台東区台東二丁目六番六号

被上告人

ギアテック株式会社

右代表者代表取締役

伊藤俊一

埼玉県草加市栄町二丁目八番三〇-一一〇三号

被上告人

伊藤俊一

宮城県古川市稲葉字新堀五三番地の一

被上告人

ユーバー精密株式会社

右代表者代表取締役

三輪勲

右訴訟代理人弁護士

佐藤由紀子

右当事者間の東京高等裁判所平成六年(ネ)第二〇二七号実用新案権侵害行為差止等請求事件について、同裁判所が平成七年七月一九日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人久江孝二、同宮瀬洋一の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一 裁判官 福田博)

(平成七年(オ)第二一四七号 上告人 精工研株式会社)

上告代理人久江孝二、同宮瀬洋一の上告理由

原判決は、判決に影響を及ぼすことが明らかな重要事項について理由を附せず、理由に齟齬がある。(民事訴訟法三九五条六項違反)

一 原判決は、三〇頁において、

「三 被控訴人製品について

被控訴人製品が、段部10のみで巻上用ピニオン5の一端を支持する構造のものであり、段部10と平歯車20との両者によりこれを支持する構造を有しないことは、原判決理由四(原判決二七頁末行ないし三五頁九行)記載のとおりであるから、この記載を引用する。」

と説示する。

そして、原判決が引用する一審判決理由四 三一頁末行から三二頁四行には、

「検甲第八号証及び検乙第六号証の内容を更に検討すると、巻上用ピニオン5と平歯車20の間隙から背景が見えない状態から平歯車20が軸方向にはねるように動く場合や、両者の間隙から背景が見える状態から平歯車20が軸方向にはねるように動いて背景が見えない状態にになる場合があることが認められるが、それらの場合でも、巻上用ピニオン5が平歯車20に衝突した衝撃や反動を受けている状況は認められない。」

と判示している。

二 つまり原判決の引用する一審判決は平歯車20が軸方向にはねるように動く場合があることを認めながら、他にはねるように動く理由を何も説明しないで、巻上用ピニオン5が平歯車20に衝突した衝撃や反動を受けている状況は認められないといっているわけで、明らかに理由不備であり、理由の齟齬がある。

巻上用ピニオン5が平歯車20から反動を受けている以外に他にはねるように動く力が働いていることの理由がなければ素直に巻上用ピニオン5が平歯車20から反動を受けていると認定すべきものなのである。

三 そもそも巻上用ピニオン5が平歯車20に接触し、その結果巻上用ピニオン5が反作用を受けて平歯車20に支えられているかどうかは検証可能な事実なのである。

そして、被上告人らが自ら提出したビデオテープ(検乙第六号証)を見れば巻上用ピニオン5が平歯車20に接触していることは一目瞭然なのである。

別紙写真は検乙第六号証一〇〇秒以後六〇秒後のビデオテープをスチール写真化したもので、これをみれば右の事実は明らかである。イ点の黒い部分の間隔は〇・一mmあり、平歯車20と巻上用ピニオン5の間隙である。これだけみれば平歯車20と巻上用ピニオン5は接触していないようにみえるが、同じ写真のロ点は平歯車20の巻上用ピニオン5側のリングであり、このリングの幅は〇・一mmである。(このリングの存在は乙第三号証の四にも明記されている。)

この〇・一mmのリングがあるがゆえに巻上用ピニオン5は平歯車20の一部であるリングに接触するためイ点の黒い部分は〇・一mmより短くならず空間が黒く写されているのである。

おそらく、原判決及びその引用する一審判決は平歯車20についている〇・一mmのリングの存在を見逃したと思われる。

このように検乙第六号証によっても巻上用ピニオン5が平歯車20に接触し、その反作用を受けていることは厳然たる事実として認められるのである。

四 又設計図面も別紙シミュレーション図のとおり被上告人らの設計図面をもとに巻上用ピニオン5をわずか四度傾かせただけで巻上用ピニオン5が平歯車20に接触し、支持を受けていることも明らかになるのである。これは原判決がイ号物件の設計図と認めた乙第三号証一ないし七から理論的に導かれる結果であり、その点でも原判決には理由齟齬がある。

五 以上の次第で被上告人らの製品が段部10と平歯車20との両者により巻上用ピニオン5を支持する構造を有することが明らかである。

よって、被上告人の製品は原判決が認定した本件実用新案の構成案件「本考案は、巻上用ピニオン5の一端が常時段部10及び平歯車20に接触していることは必要でないにしても、巻上用ピニオン5が側枠体から内部の方向に一定距離以上移動した場合には、段部10と平歯車20との両者によって支持されること」に該当するから、被上告人らの製品は本件実用新案権を侵害するものである。

六 以上の点により原判決は違法であり破棄されるべきである。

以上

(添付書面省略)

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