最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)1370号 判決 1949年1月11日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人西尾盛三郎の上告趣意について。
原判決は、被告人は原審相被告人国生和弘と共謀の上、原判示の強盜をした事実を認定しているのであり、右の事実は原判決舉示の證據上、認め得るところである。しからば、かりに被告人自身が所論のごとく被害者に海軍ナイフを突き付け脅迫をした事実がないとしても、既に前示共謀の事実が認められる以上、他の共犯者の脅迫行爲によって、強盜罪の共同正犯たる責任は免れないのである。原判決は、右共犯者のうちのどちらが現実に脅迫の実行行爲をしたかということを明示していないことは所論のとおりであるけれども、前示のごとく二人共謀の事実は原判決において明確に認定せられ、且つ、右共犯者のどちらかが現実に脅迫の実行行爲をしたことは原判文上おのずからあきらかなのであるから、判決に掲ぐべき被告人の「罪トナルヘキ事実」の摘示としては原判決の記載はなんら欠くるところはないのである。(當裁判所昭和二二年(れ)第九八號同二三年一月一五日判決参照)論旨は理由がない。
よって刑事訴訟法施行法第二條舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のごとく判決する。
右は全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)