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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)546号 判決 1949年1月25日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人遠藤周藏提出上告趣意第三點について。

しかし、(一)刑法第十九條第一項第四號に所謂「前號に記載したる物の對價として得たる物」の中には「賍物の對價として得たる物」をも含み、且つその對價が同條第二項に定める、「其物犯人以外の者に屬せざるとき」の條件に當てはまるときは、之を沒収することができること。次に(二)賍物が公定價格の定めのあるものであるときは、被害者の刑訴第三七三條第二項に據るその賍物の對價に對する交付請求權の許容せられる範圍は、右公定價格相當額に限られるのであって、從って裁判所は右交付の請求あるときは、押収中の賍物の對價の内より右公定價格相當額を被害者に還付する言渡を爲すべく、次に(三)沒収は以上の額を差引いた殘額の押収金の金額を沒収することができること。以上は何れも當裁判所第一小法廷の判例とするところであるが、當小法廷においても全く之と判斷を同じうするものである(當裁判所昭和二十三年(れ)第五四五號、同年十一月十八日第一小法廷判決)。

本件第二審判決は「押収に係る現金貳萬圓は被告人が本件犯行に因り得たる賍物の對價として得たるものなるところ内金參千八百十二圓四十錢に付きては被害者弘前市長岩淵勉より交付の請求あるにより刑事訴訟法第三百七十三條第二項第一項に從い之を同被害者に還付し他は刑法第十九條第一項第四號第二項に從い之を沒収」したこと明らかであって、又右還付額は本件被害物件の公定價格相當額であることも記録上明瞭である。然らば本件第二審判決は前示當裁判所の判例と一致の見解に立ったものであって、寔に正當の措置と謂わねばならぬ。左れば以上と見解を異にする所論は之を採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)

以上の如く、本件上告は何れもその理由がないから、刑事訴訟法施行法第二條舊刑訴第四百四十六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見に依るものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重)

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