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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)675号 判決 1948年10月23日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人提出の上告趣意書は末綴のとおりである。

凡そ不法に領得する意思を以って、事実上他人の支配内に存する物體を自己の支配内に移したときは、茲に窃盗罪は既遂の域に達するものであって、必らずしも犯人が之を自由に處分し得べき安全なる位置にまで置くことを必要とするものではない。

原判決摘示の證據に依れば、被告人は原博、若生富三と共謀の上、窃盗の意思を以て判示内務省東北土木出張所自動車車庫の中から、木炭六俵を擔ぎ出して之を右土木出張所の柵外に持出したことは明らかであり、此事は即ち右土木出張所管理者の右木炭に對する支配を排して被告人等の支配下に移したものと認むべきであるから、被告人等の右所為を窃盗罪の既遂を以って問擬したる原判決は正當であって、論旨は理由がない。

仍って、刑事訴訟法第四百四十六條に從い主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見に依るものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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