最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)711号 判決 1948年11月06日
主文
原判決を破毀する。
本件を高松高等裁判所に差戻す。
理由
辯護人本吉加岐盤上告趣意第一點について。
よって記録を調査するに、原審第一回公判調書によれば、所論の長尾警察署長の香川縣刑事課及び長尾郵便局長宛て各電話照會に對する回答聽取書については、いずれもその證據調べをなした旨の記載がない。その他原審公判において、右書類の證據調をした形跡がない。然るに原判決は、右両回答聽取書中の記載の一部を引用し、他の證據と相俟って判示事実を認定しているのであるから、適法に證據調べをしない證據を他の證據と不可分的に綜合して犯罪事実を認定した違法あるに帰する。しかも右の違法は判決に影響を及ぼさないとはいえないから、原判決はこの點において全部破毀を兔かれない。
よって同辯護人の他の論旨に對する判斷を省略し、なお右の違法は事実の確定に影響を及ぼすべきものと認められるから刑訴第四四八條の二により主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎)