最高裁判所第二小法廷 昭和23年(オ)146号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(要旨)
證據調の限度は裁判所の自由裁量に委ねられているのであるから、檢證の申請を採用しなかつたからといつて、審理不盡の違法ありとはいえない。
(説明)
本要旨そのものは至極當り前のことでこゝに掲げるまでもない位であるが、本件につき原審東京高等裁判所は、賃貸借の解除と民法五四一條との關係に關して、從來の通説判例と異る注目すべき判斷を示しているので、參考までに左に掲記する。なお右判斷は上告理由の攻撃の對象とならずむしろ上告理由はこれを是認する前提に立つているので、最高裁判所も正面からその當否を判定することはなかつたが、ことは實體法規の解釋適用の問題であり、しかも最高裁判所は本件上告を棄却したのであるから、間接に右判斷を支持したものと認むべきであろうか。
「凡そ賃貸借契約は繼續的契約關係であつて、賃貸人と賃借人との相互の信賴關係を基礎としているものであることは賃貸借において原則として転貸讓渡を禁止しているところから見ても明かである。故に當事者に賃貸借關係の繼続を著しく困難とするような不信行爲があつた場合には相手方はこれを信義の原則に反するものとして直に(筆者註民法五四一條の催告を要せず)契約の解除ができるものと解するのが正當である。而して建物の賃貸借に於て賃借人が賃貸人の同意なしに賃貸借の目的たる建物の改造模樣替等を爲し得ないことは勿論であるから、本件において控訴人竹本が前記のように被控訴人に無斷で本件賃借家屋の柱を切斷して座敷を造り、壁を切取つて隣家との通路を設け、便所を壞して板戸で釘付にする等、前記認定の(イ)乃至(チ)のような家屋を破壞改造した行爲は全く不當の所爲であるのみならず、賃貸借の基礎である信賴關係を蹂〓し被控訴人をして本件賃貸借關係の繼続を著しく困難ならしめる信義に反する所爲であると認めるのが相當である。從つて被控訴人はこれを理由として本件賃貸借契約を解除することができるものというべきであるから、本件賃貸借は前記解除の意思表示によつて適法に解除されたものといわざるを得ない。」