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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2988号 判決 1950年4月21日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人神道寛次上告趣意第一点について。

しかし、被告人等が本件ガソリン(ドラム缶入一六本)埋設の貯蔵所を発堀した程度は原判示のとおりであることは、原判決が証拠に採っている被告人等の原審公判廷における供述記載中「それは東西二米五〇糎南北五米一〇糎深さ九〇糎に互ったと言うが怎うか」との裁判長の問に対し、被告人等は「その位だったでしょう」(記録三六一丁裏五行目以下、同三六七丁表四行目以下)と答えているところに依って明白であり、そして此ことは亦原審採証の検証調書中の記載とも一致するところである。所論毀棄の程度に関する以上に反する主張は全く独自の主張であって採るを得ない。次に刑法第二六一条に謂う損壊とは物質的に物の全部、一部を害し又は物の本来の効用を失わしむる行為を言うものであるが、平原炭鉱が本件ガソリンを埋設貯蔵したのは盗難及び火災予防のためであるから(原判決後段判示)、上示原判示認定程度の毀棄行為は右貯蔵施設本来の効用を喪失するに至らしめたものであることは明白である。又所論原状回復の難易如何は本罪の成立に影響あるものではないのである。次に所論末段の権限あるものが貯蔵物を堀出す為め土壌を排除する行為は、勿論その権内の行為であるから、此適法行為と本件行為とを比較判示する必要のないことは喋言を要しないところである。要するに各所論は原審が証拠に採っていない他の資料又は独自の想像を基としての立論であって、畢竟原審の証拠の取捨判断事実の認定を非難するに帰するものであってすべて採用に値いしない。論旨何れも理由なし。

同第二点について。

しかし、原判示の如き強要毀棄の方法をもって本件ガソリンを摘発することは仮令該物件が隠匿物資であったにせよ、所論炭鉱労働組合にその争議権乃至争議行為として右物資摘発の権限のないことは論議を要しないところである。しからば仮令被告人等の行為は個人の意思に出でず総て当該労働組合の決議の結果の執行行為であったとしても、之を正当適法化する謂われはなく、従って本件強要及び毀棄行為にはすべて所論憲法及び労働組合関係法条の適用のないものであること寔に明かである。そうして被告人等の原判示の行為はその挙示証拠に依って之を十分に認めることができるのである。論旨は理由がない。

仍って、刑訴施行法第二条旧刑訴法第四四六条に従い、主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員の一致の意見に依るものである。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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