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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)3115号 判決 1950年4月14日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人村田善一郎の上告趣意第一点について。

所論証人高橋アイ、高橋金太郎、高橋きみゑに対する訊問調書は原判決がこれを証拠としていないのであるから、仮りに右訊問手続に瑕疵があったとしても、原判決を違法ならしむるものではない。

所論斎藤タミに対しては、第一審裁判所は昭和二二年一一月二一日附決定をもって同人を証人として訊問する、右訊問については、昭和二二年一一月二三日の検証当日受命裁判官をしてこれを為さしめる旨の証拠決定をしたことは記録上明白であるから、同人に対して証拠決定なくして証拠調をした違法があるとの論旨は採るに足りない。

次に同裁判所が受命裁判官をして検証現場に於て証人を訊問せしめると決定したのに、受命裁判官判事豊川博雅は、五所川原警察署飯詰駐在所で証人高橋セイ、斎藤タミを訊問したことは所論のとおりである。しかしながら、右駐在所が、検証現場の附近程遠からぬところにあることは記録上窺われるところであり、受命裁判官が証拠決定を施行するに当っては「検証現場」のいずれの地点において証人調を行うかを決することは、もとよりその権限に属するところであって、さらに現場附近最寄りの駐在所で証人調を行うがごときことも、該決定の趣旨に反しないかぎり、天候、環境、その他証拠調べの都合等を考慮して受命裁判官が自由に裁量し得べき権限に包含せられるものと云はなければならない。しかして、前記受命裁判官の駐在所における証人訊問は証拠決定の趣旨に反するものとは認められないばかりでなく、右訊問についてはこれに立会った検察官も、弁護人も何ら異議を述べず、又右訊問調書が原審公判において、証拠調を施行せられた際にも、被告人からも弁護人からも、異議を述べた形跡のないことは記録上明白である。従って原審が右調書を証拠としたことに所論のような違法はないのである。

同第二点について。

所論検証並びに証人訊問については、その施行の日時場所が適法に弁護人に告知せられ、かつ、その施行にあたっては終始弁護人が立会ったことは記録上明らかである。右期日、場所が直接被告人に通知せられたことは、記録上認められないけれども、被告人は、現に、右検証には全部立会ったこと、及び右証人訊問は検証に引き続いて、その検証現場附近程遠からぬ場所で行われたことは、また記録上明白である。しかして、右証人訊問に際して立会の弁護人から、被告人に対する通知に関して、異議を述べた事跡もなく又原審が右訊問調書について公判において証拠調を施行した際にも、弁護人からも、被告人からも何ら異議を述べた事実は認められない。しからば、原判決が右調書を証拠としたことについて、所論のような違法あるものとすることはできない。(昭和二三年(れ)第一〇五四号同年九月二二日大法廷判決参照)

同第三点及び第四点について。

所論原審の各公判調書に、被告人の氏名として「神与志雄外五名」と記載されていることは所論のとおりである。しかしながら右記載は本件被告人六名を指称するものであることは、記録全体を通じて理解し得るところである。所論は畢竟、右記載を以てしては、何人を指称するか不明であるとの前提に立って、原審の公判手続の違法を主張するものであるが、その理由のないことは前述するところによって明らかである。

同第五点について。

所論公判廷には、裁判長裁判官小山章、裁判官村上武の外裁判官今泉勘七が列席したことは、同公判調書の記載によって知ることができる。(同公判調書の記載は明確を欠く憾はあるけれども、今泉勘七と判読できないことはない)又上欄訂正字数の三は四の誤記であること明瞭である。論旨は理由がない。

よって刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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