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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)29号 判決 1950年4月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由について。

一、原判決は、上告人の養父辰市(被相続人)はその判示の如き事情の下に実子を持たぬ、後妻である被上告人の将来を慮り、当時同人の所有していた本件物件その他一切の動産、不動産を挙げて、これを被上告人に贈与した事実を認めたのであつて、長子相続制を認めていた当時の民法下においても、これをもつて所論のように直ちに公序良俗に反する無効の契約とすることはできない。かかる場合に、家督相続人に遺留分減殺請求権を認めた同民法の趣意からしても、右のごとき契約を当然無効とするものでないことは明らかである。

二、上告人が、第一審口頭弁論において、被上告人主張にかかる本件贈与の事実を全面的に否認したとしても、その贈与を否認することは、所論のように「若シ其ノ否認ガ認メラレズ贈与ガ認メラレル場合ニハ其ノ家督相続財産ニ付キ遺留分ニ基キ減殺請求権ノ行使ヲナス主張ヲ包含シテオル」ものと解することはできない。右の否認は、本件贈与の事実の存在を争うに過ぎないのであつて、所論のような積極的な意思表示を包含するものとは、到底解することができないからである。論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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