最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)312号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(要旨)
賃貸人賃借人間に賃貸借家屋の明渡について折衝があり、賃貸人が賃借人よりその家屋の一室明渡の承諾を得て、これに移轉し、賃借人と同居するに至つた、からといつて、右當事者間に和解契約が成立したといわねばならないことはない。
(説明)
被告人(賃貸人)は上告人(賃借人)から賃借家屋の中六疊一室の明渡を受けて、それに移り住み、その後半年を經ないで、なお他の二室について賃貸借の解約を申入れ、その明渡を求めた。上告人は、最初六疊一室の明渡をするまでには三ケ月の折衝が行われ漸く一室明渡の運びにいつたもので、それは和解契約成立の結果に外ならない。然るに被上告人はその後半年を經ないうちに、更に賃借家屋の他の部分の解約申入をして來たのであるから、解約申入の正當事由は、右の和解契約成立以後の事由に限られるのに、原判決はそれ以前の事由を正當事由として採上げ、賃貸借解約申入を有效としているのは不當である、として、上告してきたのである。
原判決は、要旨記載の事實を認定した上、それは和解契約の成立によるのではない、として、解約申入の正當事由をそれ以前にさかのぼつて採上げたわけであり、本件最高裁の判例も、和解契約の成立を肯定しなかつた原判決の態度を正當としたのである。從つて、和解契約成立後の解約申入の正當事由に、時間的制限があるとの論點は、何等の判斷を受けるにいたらなかつた。