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最高裁判所第二小法廷 昭和25年(あ)2108号 決定 1952年3月04日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人の上告趣意並びに追加趣意は末尾添附の書面記載のとおりである。

論旨には原判決は憲法に違反するというが原判決のどの点が憲法の如何なる条規に違反するかを明示しないばかりでなく、所論の本件被告人の所為は自救行為であって無罪であるとの主張は刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらない。しかも判示の中島町子が判示の家屋を占拠するのは被告人の該家屋に対する賃借権を侵害するものであっても、被告人としては之が侵害を排除するためには須らく国家機関の保護を求むべきであり、自ら判示の如く威力を用いて同女の営業を妨害するが如きことは法の認容しないところといわなければならない。(原判決は本件について刑法三六条三七条の要件の具備する事実は認定していない)この点に関する原判決の説示は相当であって論旨はとるを得ない。その余の論旨は結局被告人のした所論告訴事件に対する所轄警察署の処分の不当を非難するもので原判決に対する適法な上告理由とならない。

なお記録を精査しても刑訴四一一条に該当する事由はない。

よって、同四一四条三八六条一項三号に従い全裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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