最高裁判所第二小法廷 昭和25年(オ)87号 判決 1951年4月27日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告訴訟代理人弁護士大道寺慶男の上告理由第一点乃至第五点について。
原判決の適法に確定した事実によれば、(い)上告人は本件罹災当時の借地権者である坂井田信之の占有機関として今尚本件係争土地を占有している者ではなく、上告人に借地権あるものとして即ち上告人自己のためにする意思をもつて占有している者であること、(ろ)又上告人に右坂井田信之から転借を受けたという上告人の主張は一応之を肯認できるけれども、当時の本件土地所有者即ち賃貸人である訴外中央土地株式会社(後に華陽産業株式会社と改称)より右転貸借に関し承諾を得た証跡がないから、右転貸借による上告人主張の借地権は右会社並びにそれから所有権を取得した即ち第三取得者である被上告人にも対抗し得ないものであること、(は)又坂井田信之から借地権の譲渡を受けたとの上告人の主張も右会社の承諾を得たとする証拠がないから之又被上告人に対抗し得ないものであること、(に)又右訴外会社の代理人位田実から賃借を受けたとする上告人の主張も之を認めることができないこと。即ち結局上告人は本件土地に関し被上告人に対抗し得べき借地権も使用権も一切有しないことが明らかである。
しかして、この場合、土地の所有者たる被上告人は民法六一二条二項に基づいて、坂井田信之に対する賃貸借を解除すると否とにかかわらず、又賃借人たる坂井田信之の承諾を要せず、右坂井田の賃借権が罹災都市借地借家臨時処理法一〇条、一一条によつて被上告人に対抗し得べきものであると否とに関係なく、(所有権者にその占有を対抗できない占有者たる)上告人に対して、直接本件土地の明渡を請求し得るものと解すべきであつて、原判決も同旨の判断に出でたものであることは明らかであるから、論旨はすべて理由がない。
同六点について。
不法占有者の占有を知つて所有権を譲受けたからといつて、当該不法占有者の占有が適法の占有に変ずるものではない。又所論指摘の法令においても、かかる場合の土地の売買を禁止又は制限する何等の根拠はないのであるから、論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、訴訟費用の負担につき同九五条同八九条に従い、裁判官全員一致の意見によつて、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)