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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3524号 決定 1953年4月30日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鈴木義男、同河野太郎の上告趣意第一点について、

第一審第三回公判調書(二九九丁以下)によれば同公判において主任弁護人から「本件恐喝したという現金三万円は無期限の純消費貸借であるのでこれが弁済した事実を証する為」金三万円の供託書について証拠調の請求をしたのに対し裁判所は検察官の意見を徴した上、その採否を留保し公判を続行したことが明らかである。しかし同第四回公判において証拠調を終えんとするに当り「裁判官は訴訟関係人に対して反証等の取調請求等により証拠の証明力を争うことができる旨を告げたところ、訴訟関係人は別に争はないと述べた」(三四四丁裏)のであるから、この際被告人及び弁護人は前掲の供託書の取調請求を抛棄したものと解すべきである。従って第一審裁判所が証拠調の請求につき決定をなさなかったといって所論のごとき違法は存しないのであるから違憲の主張はその前提を欠き採用することができない。

次に上告趣意第二点は事実誤認、同第三点は量刑不当の各主張であって、刑訴四〇五条の適法の上告理由に当らない。また本件について、同四一一条を適用すべきものとも考えられない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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