大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3684号 判決 1953年5月01日

本籍

北海道岩内郡小沢村字シマツケナイ六二〇番地

住居

小樽市最上町二六番地

レントゲン技工

松浦正雄

大正一四年三月五日生

本籍

北海道岩内郡岩内町字栄八番地

住居

小樽市砂留町七五番地

映画宣伝代理業

三ツ野謙一こと

水野兼一

大正四年九月一八日生

右の者等に対する各麻薬取締法違反被告事件について昭和二六年七月一九日札幌高等裁判所の言渡した各判決に対し各被告人からそれぞれ上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件各上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人水野兼一の負担とする。

理由

被告人松浦正雄の弁護人鍛治利一同沢田徳右衛門の上告趣意第一点について。

同一事件においては、訴訟手続はその開始から終末に至るまで一つの継続的状態と見るべきであつて訴訟のいかなる段階においても唯一の危険があるのみで、そこには二重の危険というものは存在せず、一審の手続も控訴の手続も同じ事件においては継続せる一つの危険の各部分たるにすぎないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二四年新(れ)第二二号同二五年九月二七日大法廷判決、昭和二四年(れ)第五九号、同二五年一一月八日大法廷判決)。論旨は控訴審の手続において控訴裁判所が新な証拠の取調を為すことなく、刑訴四〇〇条但書により訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみにより、しかも検事の控訴理由に基き第一審判決の量刑を不当なりとして破棄自判し、第一審判決の刑より重い刑を言い渡すことは、被告人を二重の危険に置くものであり憲法三九条後段に違反すると主張するのであるが、前記判例の趣旨に反する独自の見解にすぎない。従つて、論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は憲法三七条三四条違反を主張するけれども、その実質は単なる刑訴法違反の主張に帰し、適法な上告理由にあたらない。

同第三点は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

被告人水野兼一の弁護人佐藤末野の上告趣意は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

また、記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められないから、同四〇八条(なお、被告人水野兼一につき刑訴一八一条)により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例