大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)3865号 決定 1953年6月12日

本籍

朝鮮慶尚南道信州郡庄〓面明里

住居

名古屋市昭和区福江町三丁目二三番地

飲食店業

河本定子

大正一二年六月二五日生

右公務執行妨害被告事件について昭和二六年九月一〇日名古屋高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人森健の上告趣意第一点について。

しかし論旨は刑訴四〇五条に定める上告理由に当らないのみならず、事実審たる第一審裁判所の挙示する証拠によれば、判示日時収税官吏岩瀬源治ほか四名が被告人方において臨検捜索差押の執行をなすに際し、昭和簡易裁判所簡易裁判所判事堀川信男の発した臨検捜索差押許可状を右岩瀬が携行所持していた事実が肯認できるのであるから、所論のごとき違法は存しないのである。(もつとも収税官吏が令状を被告人に示さなかつたことは論旨主張のとおりであるが、右は第一審公判における証人岡田英世、同岩瀬源次の供述によれば同証人等収税官吏が臨検捜索をなさんとしたとき被告人が不在であつたので警察吏員立会のもとにこれを開始したが、その執行の途中で被告人が帰宅するや、これを見た被告人は痛く憤慨して証人岩瀬等に暴行を加えたので令状を被告人に示すことができなかつたためであることが明かに窺えるのである。)論旨は理由がない。

同第二点について。

第一審判決の挙示する証拠によれば、差押の執行が未だ終了しない間に被告人が判示の暴行を加えたことが明かであるから、公務執行妨害罪の成立することは当然である。第一審判決及びこれを維持する原判決には所論のような審理不尽も理由のくいちがいもないから論旨は理由がない。

同第三点について。

一件記録に徴するのに本件について刑訴四一一条二号を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例