大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(あ)4518号 判決 1953年7月31日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人阿比留兼吉の上告趣意第一点について。

所論は、法令違反の外に憲法違反をも主張するけれども、その実質は、結局、単なる訴訟法違反の主張に帰するのであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、原判決主文末項は被告人石丸清に対して言渡されたものであり、その措辞の意とするところは該没収の方法が第一審判決と同様であることを明らかにする為めの配慮に出でたに外ならないものと解するのが相当であるから、原判決を目して所論のような違法があるものということはできない。

同第二点について。

所論は、原審で控訴趣意として主張判断のなかった第一審判決の訴訟法違反を新らたに主張するものであるから、適法な上告理由とならない。のみならず、同判決はさば三四〇貫四〇〇匁の価格を所論計算書に仕切金として記載してある金額より二〇円少く認定、没収しており、被告人原揮市、同原花吉に取っては却って利益になっているのであるから、仮りに第一審判決に所論のような違法があるとしても、それが刑訴四一一条にいわゆる「判決を破棄しなければ著しく正義に反する場合」に該当しないことは多言を要しない。

同第三点について。

所論は、単なる訴訟法違反の主張であって、同四〇五条の上告理由に当らない。そして、記録によれば、所論両事件は原審で事実上併合して審理が行われ、被告人弁護人共に異議なく手続が進行されていることが窺われるから、併合審理の決定はあったものというべきである(昭和二五年(あ)第一九七六号同二七年一一月一四日当小法廷判決、判例集六巻一〇号一一九九頁参照)。従って、原審には所論のような違法はない。

同第四点について。

所論は、法令違反の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお、本件犯行当時における漁業法(昭和二六年一二月一七日法律第三一三号による改正前のもの)七〇条にいわゆる「採捕」とは、水産動植物を採取捕獲する目的で有毒物又は爆発物を使用した者が、現実にその動植物を取得占有するに至った場合のみに止まらず、有毒物又は爆発物の使用により動植物を疲憊斃死せしめ容易に捕捉し得る状態に置いた場合をも指称するものと解するのが相当であるから、これと同趣旨に出でた原判示は正当であって、論旨は採用することができない。

同第五点について。

所論は、単なる訴訟法違反、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

なお、記録を調べても、本件につき、同四一一条を適用すべき事由ありとは認められない。

よって、同四〇八条に則り、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例