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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)1956号 判決 1952年2月29日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人鍛冶利一の上告趣意第一点について。

共同審理を受けた共同被告人(共犯者を含む)の自白で被告人の自白を補強することができることは当裁判所の判例とするところである。右判例の趣旨に徴すれば訴訟法に特別の規定がないのであるから具体的な場合に補強するかどうかを裁判官の健全な裁量にまかせたものと解するのが相当である。論旨は採用できない。(最高裁判所判例集三巻六号七三四頁参照)。

同第二点について。

被告人清三郎の窃盗教唆については、原判決挙示の証拠で充分に認めうるから論旨は採用できない。

同第三点及び第四点について。

憲法三八条三項にいわゆる「本人の自白」には判決裁判所の公廷における被告人の自白を含まないことは当裁判所の判例とするところであるから論旨は何れも採用できない。(最高裁判所判例集二巻九号一〇一二頁参照)。

同第五点について。

現行刑訴法施行前に公訴の提起があった、いわゆる旧法事件について刑訴施行法三条の二で最高裁判所への上告について制限が設けられ又最高裁判所規則三〇号で右事件の審判の特例が設けられても前記条項並に同規則の定めるものの外は、改正前の刑訴法及び刑訴応急措置法によるべきこと刑訴施行法二条の定むるところである。従て旧法事件である本件において自白に関する刑訴三一九条の適用がないこと明かであるから論旨は採用できない。

同第六点について。

しかし刑訴施行法三条の二及び旧刑訴事件の控訴審及び上告審における審判の特例に関する規則(最高裁判所規則三〇号)は何れも、同類型の事件に同様の取扱をなすものであるから憲法一四条平等の原則に反するものではない。このことは、さきに刑訴施行法二条について当裁判所が言渡した判例の趣旨に徴して明かであるから論旨は採用できない。(最高裁判所判例集四巻八号一四二九頁参照)。

同第七点及び同第八点について。

前掲論旨第三点及び同第四点において説示したとおりであるから同じ理由により論旨は何れも採用できない。

同第九点について。

論旨は事実誤認の主張であって上告適法の理由ではない。

同第一〇点について。

所論書類は刑訴応急措置法一二条にいわゆる供述にかわるべき書類であって、所論のような瑕疵があっても、適法に証拠調がされており又被告人において原本乃至その写の作成者の尋問を請求もしなかったのであるから原審が右書面を罪証に供したからといって、原判決は採証の法則に違背したということはできない。論旨は理由がない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴法四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、論旨第三点、第四点、第七点、第八点に関する裁判官栗山茂の少数意見(最高裁判所判例集二巻九号一〇二七頁以下所載)を除き裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 藤田八郎)

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