最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)207号 判決 1951年11月02日
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役一月及び罰金七百円に処する。
右罰金を完納できないときは、金二十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
弁護人岡照太の上告趣意について。
論旨は事実誤認の主張であって上告適法の理由にならない。
職権により記録を調査するに本件公判請求書(記録三四丁)によれば、被告人に対する公訴事実として「司法警察官意見書記載の犯罪事実、但(3)の事実を除く」と記載しあるところ、第一審においては右公判請求書において除外し起訴しなかった右司法警察官の意見書記載の(3)の事実(昭和二三年一二月一日頃中口新一等が西口役平方より窃取した毛布及国防色生地等を盗賍品であることの情を知り乍ら代金九千六百円位で買受けたとの事実)に付ても審判をなしたる上、有罪の認定をしており、そして原審においては第一審判決を引用して、その判示にかかる犯罪事実の全部を認定して処断しているのであるから、右は審判の請求を受けない事実について、裁判をした違法があるものといわねばならない。そして右の違法は判決に影響を及ぼすもので且つそれが著しく正義に反し刑訴四一一条に該当するものである。
よって刑訴施行法三条の二、刑訴法四一一条により原判決を破棄し、刑訴施行法二条、旧刑訴四四八条により更に判決をすることとすると、原判決が適法に確定した事実(但し、原判決が引用する第一審判決書摘示の事実中第三の事実を除く。)に法令を適用すれば、被告人の判示所為は、各刑法二五六条二項(なお罰金額については本件犯罪後罰金等臨時措置法が施行され、その変更があったので刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)に該当し、以上は、同法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条、一〇条により犯情の最も重い原判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、同法四八条により各罪について定めた罰金の合算額の範囲内において被告人を懲役一月及び罰金七百円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条に則り、金二十円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとし、主文のとおり判決する。
この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。
(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)