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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)113号 判決 1952年5月02日

主文

原判決を破棄し本件を札幌高等裁判所函館支部に差し戻す

理由

上告代理人弁護士土家健太郎の上告理由第一点について

本訴の請求原因は上告人所有の本件不動産について上告人より被上告人に二分の一の持分を譲渡する旨の調停が当事者間に成立し、その移転登記を了したが右調停は仮装の意思表示に基づくものであつて無効であるというのであり又原判決が援用した前確定判決は被上告人が原告となつて上告人を被告とし右調停により取得した二分の一の持分権に基づく分割請求権あることを原因として提起した共有物分割請求訴訟に対するものである。それゆえ前者は右調停に基づく権利関係の存否を訴訟物とするに反し後者は右調停による共有権の取得を前提とするとはいえ直接の訴訟物は共有権に基づく分割請求権の存否であることは明らかである。そして右分割請求訴訟において裁判所は前記調停に基づき本件不動産の二分の一の持分は上告人から被上告人に有効に贈与されたが当事者間において右共有物の分割を請求しない旨の契約も同時に成立したから被上告人はその分割を請求できないとの理由で被上告人の請求を棄却し該判決が確定したのであるからその確定判決により訴訟物たる共有分割請求権の存在が否定されたに過ぎないものであり右判決の理由において本件不動産の二分の一の持分が贈与により被上告人に移転したと判断されていてもその部分にまで既判力を及ぼすものではない。然らば原判決が論旨摘録の如く判示し前示共有物分割請求訴訟の確定判決の理由において肯認された贈与関係について既判力を生ずるものと解したことは失当であつて論旨は理由あり原判決はこの点において破毀を免れないから他の論旨に対する説明を省略する

よつて民訴四〇七条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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