最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)759号 判決 1953年6月26日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人斉藤敏之の上告理由について
論旨は、原判決に関与した裁判官河野力は、本件の第一審において数回にわたり口頭弁論を指揮し、当事者の陳述、証拠の申出を聴き、証人訊問その他の証拠調を為したものであるから、第一審の判決に関与しなかつたとしても、上訴審である原審においては、前審の裁判に関与したものとして、職務の執行から除斥されなければならなかつたものである。従つて原審判決は裁判に関与することのできない裁判官が関与した違法があるというのである。しかしながら民訴法三五条六号の「前審ノ裁判に関与シタルトキ」とあるのは、前審の裁判の評決に加わつたときの意であつて、たとえ前審において口頭弁論を指揮し、証拠調を為した事実があつても、該事件の上訴審において職務の執行から除斥されるべきではないのである。論旨は右と異る独自の見解に基き原判決の違法を主張するものであつて、採るを得ない。
よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)