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最高裁判所第二小法廷 昭和26年(オ)767号 判決 1953年1月30日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告人等訴訟代理人弁護士長縄由治郎の上告理由について。

賃借家屋の間貸について特別の事情があるため、間借人の使用関係は事実上のものにすぎず、法律上の権利関係が設定されたものとは認め得られない場合がないわけではないが、それだからといつて現下の住宅事情の下においても、すべての間貸が民法第六一二条の転貸に当らないということはできない。原判決認定の事実によれば、本件間貸が単なる事実上のものとは認められないとする趣旨の原判示は相当であるから、原判決が右間貸をもつて民法第六一二条にいわゆる転貸借に外ならないものとしたのは正当である。そして家屋の一部の無断転貸を理由として家屋全部の賃貸借を解除しても、右解除権の行使を目して権利濫用とはいえないから、右転貸借につき賃貸人たる被上告人の承諾のない事実を確定した上、無断転貸を理由とする被上告人の本件家屋賃貸借解除を容認した原判決には何等違法はない。

その他の論旨は「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとは認められない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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