最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)2939号 判決 1953年10月30日
主文
本件各上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人島田藤三郎、同喜多英一の負担とする。
理由
被告人中川秀忠の弁護人木村順一の上告趣意第一点について。
所論援用の大審院判例は本件に適切ではなく、原判決は何等右判例と相反する判断をしているのではない。そして商標法五条、同法施行規則一五条の規定による商品の類別は商品の概要類別を示したに過ぎないものであるから、商標権者は常に必ずしもその指示した類別内の商品についてのみ商標専用権を有するものということはできないのであって、類似商品である以上他の類別に属すべきものであってもその商品について商標専用権を有することがあるものと解すべきである。然らば原判決が同一見解の下に本件につき被告人等が共謀して製造したズルチンの用途並びに上野製薬工業株式会社製のズルチンの商標法上の類別如何を論ずるまでもなく被告人等の所為は右会社の商標権を侵害するもので商標法三四条一号の刑責を負わねばならないと判断したことは正当であり論旨は採るを得ない。
同第二点について
所論は単なる刑訴法違反の主張であって適法な上告理由にあたらない。
被告人島田藤三郎、同喜多英一の弁護人井上峯亀の上告趣意について
原判決は何等所論援用の判例と相反する判断をしているものではない。のみならず所論の三千九百個とあるのは三千二百個の誤記と認むべきであるとする原判決の判断は正当であり何等違法はない。
また記録を調べても本件はつき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって刑訴四〇八条一八一条により全裁判官の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)