最高裁判所第二小法廷 昭和27年(あ)5471号 判決 1954年9月24日
本籍
東京都北多摩郡村山村大字三ッ木一四番地
住居
同都中野区多田町五六番地
事務員
比留間英畝
大正五年三月二六日生
本籍
朝鮮平安南道江東郡晩達面勝湖里 以下不詳
住居
東京都板橋区板橋一〇丁目二九六〇番地
会社員
林仲賛こと
林克彦
大正二年八月五日生
本籍
仙台市大町五丁目二〇番地
住居
同市東二番丁九二番地 高橋五郎方
会社員
菊地武夫こと
大沼武夫
大正一五年一月二二日生
右の者等に対する麻薬取締法違反各被告事件について昭和二七年五月二三日東京高等裁判所の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人林克彦、同比留間英畝の弁護人志方篤の上告趣意書第一点、被告人比留間英畝の弁護人海野普吉、同位田亮次の上告趣意第一点第二点について。
被告人等の本件麻薬取引の端緒が所論のように取締官憲の陥穽により誘発されたものでない事情は原判決の説示するとおりであつて所論の事実を前提とする論旨の採るべからざることは明白である。かりに原判決の判示するような犯人逮捕について、取締官憲が詐術を用いた事実がありとしても、それがために、本件被告人等の犯罪に対する刑責に消長を及ぼすものでないことは勿論である。
被告人大沼武夫の弁護人日沖憲郎の上告趣意について。
原判決の趣旨は、麻薬の不法所持はその所持の目的原因の如何は問わないのであるから、かりに被告人の所持の目的が所論のように売買の仲介であつて自ら販売する目的でなかつたとしても、かかる目的に関する事実認定の相違は、犯罪の成否にも刑の量定にも影響するものではないというにあつて何ら所論の判例に違反するところはないのである。
志方弁護人のその余の論旨並びに被告人林克彦の上告趣意は量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条三八六条一項三号により主文のとおり決定する。
この決定は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)