最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)1123号 判決 1953年5月29日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由は本件判決末尾添付の別紙記載のとおりであり、これに対する当裁判所の判断は次のとおりである。
本件は第一審において準備手績を経た事件であるのみならず、原審第一回口頭弁論期日に争点及び証拠の整理を終り、次回期日として所論昭和二七年九月二六日の口頭弁論期日が指定されたものであることが記録上明かであるから、右期日は民訴一五二条四項にいわゆる「已ムコトヲ得サル事由」がある場合でなければ変更を許されないものであることは疑を容れない。
ところが、記録によると、所論の期日変更申立書には、上告人が昭和二七年九月九日(即ち前記口頭弁論期日の十数日前)脳溢血症を発し、三ケ月間絶対安静を必要とする旨の診断書が添付されているに止まり、その他の事情(例えば、訴訟代理人を選任することができないか等)については、これを明かにするに足りる何等の資料もないのであつて、右のような診断書を提出しただけでは未だ「已ムコトヲ得サル事由」があるとは認められない。
されば、原審が、所論の期日変更申立があつたに拘らず、これを容れず、当該期日に上告人不出頭のまま弁論を終結して判決をしても何等違法ではない。
また、原審が右期日において、さきに採用した上告人申請の証人山本常太郎の取調をしない旨宣して弁論を終結したものであることは、記録によつて明かであるが、同証人がいわゆる唯一の証拠にあたるものと認むべき資料はないから、この点に関する原審の措置もまた違法とはいい得ない。
よつて、論旨は理由がないものと認め、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、全裁判官の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)