最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)193号 判決 1955年2月18日
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役六月に処する。
被告人から金三万円を追徴する。
第一審および原審における訴訟費用は被告人の負担とする。
被告人の本件上告を棄却する。
理由
大阪高等検察庁検事長藤原末作の上告趣意について。
刑訴四〇五条にいう「判例と相反する判断をした」というためには、その判例と相反する法律判断が原判決に示されているのでなければならないが、原判決は、ただ没収、追徴を遺脱しているだけで、なにも所論判例と相反する法律判断を示しているものとはいえないから、判例違反の主張として所論を採用することはできない。しかし、刑法一九七条の四の定める没収・追徴は-所論判例が同法旧一九七条二項について判示するとおり-必要的なものであって、裁判所の自由裁量に属するものではないから、これを遺脱した原判決はもとより違法であり、刑訴四一一条一号により破棄を要するものと認められる。
弁護人鈴木義男、同山脇正夫、同河野太郎の上告趣意は、審理不尽、事実誤認、量刑不当の主張を出ないものであって、刑訴四〇五条の上告理由にあたらないし、また記録を調べても、これらの点につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、検察官の上告を容れて原判決を破棄し、刑訴四一三条但書によりさらに左のとおり判決することとし、被告人の上告は同四一四条、三九六条によりこれを棄却すべきものとする。
原判決の確定した事実に法律を適用すると、被告人の原判示一、二の所為は、いずれも刑法一九七条一項前段に当り、右は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条、一〇条により原判示二の罪の刑に併合罪の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し、被告人の収受した賄賂はその全部を没収することができないから、同法一九七条の四によりその価額を追徴することとし、なお訴訟費用の負担につき刑訴一八一条を適用する。
よって裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)