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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)2762号 判決 1955年12月09日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人松原宏遠の上告趣意について。

所論第一点前段は、違憲をいう点もあるがその実質は、被告人は所論「真相特集版」の編集に関与しなかったとの事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、同後段所論の憲法三七条二項の規定は、裁判所は、被告人の申請にかかる証人のすべてを取り調べなければならない趣旨でないことは、当裁判所の判例(昭和二三年(れ)第八八号、同年六月二三日、同年(れ)第二三〇号、同年七月二九日各大法廷判決参照)とすることろであるから、原審が所論の証人申請を採用しなかったからといって違憲を主張する論旨は採るをえない。

同第二点は、憲法三七条二項違反の主張を除いては、事実誤認、単なる訴訟法違反、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして、右違憲論の採るをえないことは、第一点後段について右に示したとおりである。

被告人三名の弁護人青柳盛雄の上告趣意について。

所論は違憲をいう点もあるがその実質は要するに、名誉毀損罪が成立するには、名誉の侵害が害意をもってなされる場合、換言すれば、批評者が意識的に虚偽の事実をねつ造して摘示した場合または他から入手した情報、風聞などが真実でないことを知りながら、敢えてこれを公表する場合に、限定せらるべきであるという独自の立法的解釈論を試みるに過ぎないもので、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人三名の弁護人神道寛次の上告趣意第一点について。

原判決が、言論、出版界において記事の出所を秘匿する慣習法があるとは認められないところであり、かりにそのような倫理慣行があるとしても、それだからといって言論、出版の業にたずさわる被告人らに限って、特に事実の証明が不充分であっても名誉毀損罪の成立が阻却されると解すべき理由はないと判示したことは、正当であり、且つかように解しても、なんら憲法二一条に違反するものでないことは昭和二五年(あ)第二五〇五号、同二七年八月六日当裁判所大法廷判決の趣旨に徴して明らかである(なお、憲法二五条の法意については、昭和二三年(れ)第二〇五号、同年九月二九日大法廷判決参照)。なお、原判決が刑法二三〇条ノ二所定の事実の真実性の立証責任について判示したところは、正当であって所論の違法は認められない。

同第二点は、違憲をいう点もあるがその実質は、所論の事実が名誉毀損罪を構成しないとの事実誤認、単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

その他記録を調べても本件につき同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

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