大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)675号 判決 1954年12月24日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人十川寛之助、同山根弘毅の上告趣意第一点について。

所論は単なる訴訟法違反の主張であって刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。なお塩酸ヘロインが麻薬取締法四条三号に該当するか否かは事実認定の問題ではなく法令解釈の問題であるからこの点について証拠を挙示する必要はなくこれに対する一審の判断は正当である。原判決が控訴趣意に答えて塩酸ヘロインがヂアセチルモルヒネの塩類であることは公知の事実であると説明していることは妥当ではないが、その結論にはあやまりはないから原判決には訴訟法の違反もない。

同第二点について。

原判決が後段において「これら物品はいずれも他の麻薬取締法違反事件について麻薬として押収せられた証拠物であるから反証のない限り真正の麻薬であると推認するを相当とする」と判示していることは所論のとおりであるけれども、原判決はその前段において一審判決挙示の証拠を綜合すれば被告人の譲り受けた物品が真正の塩酸ヘロイン及び阿片粉末であることを認めるに十分であると説示しているのであるから右後段の説明は余論に過ぎない。従って所論判例違反の主張はその前提を欠き引用の判例は適切でない。

同第三点について。

所論は単なる訴訟法違反の主張であって刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

弁護人桑江常善、同岡田錫淵の上告趣意第一点について。

裁判所が合理的な裁量により、被告人側の証人申請を却下しても憲法三七条二項に違反するものでないことは大法廷の判例である(昭和二三年六月二三日判決昭和二三年(れ)八八号集二巻七号、昭和二三年七月二九日判決昭和二二年(れ)二三〇号集二巻九号参照)。所論は採用できない。

同第二点について。

所論は違憲をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張であって刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない(十川、山根弁護人上告趣意第一点に対する説明参照)。

同第三点について。

所論は量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。

また記録を精査しても、同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例