大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)1285号 判決 1955年12月02日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告代理人弁護士木村鉱の上告理由は別紙記載のとおりである。

論旨は、原判決が上告人等は本訴提起の法律上の利益を有しない旨を判示したのを非難し、その根拠として地方公共団体の住民の各種権利義務に論及するのである。しかし、地方自治法七条一項による知事の処分は、関係市町村民の権利義務に関する直接の処分ではなく、かりに所論のような住民として有する具体的権利義務の内容について変動があつたとしても、その変動は市町村の合併等による間接的な結果に過ぎない。上告人等が従来多家良村または勝占村の住民であつたことによつて有していた権利は合併後は徳島市の住民として行使することができるのであつて、その具体的権利義務について争いのある場合に、当該権利義務の存否について訴訟をもつて争うは格別、本件合併そのものの適否については、上告人等は訴を提起する法律上の利益を有しないものといわなければならない。

論旨はまた、本件合併についての徳島県議会の議決の違法を主張し、この点に関する原判示を非難するのであるが、前述のように上告人等が本訴提起の法律上の利益を有しないものとする以上、原判決がこの点について判断をしたのは不要の判断を加えたものというべく、その当否は本訴の判決の結果に影響するところがないものというべきである。

以上説明のとおり本件上告は理由がないから、これを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例