最高裁判所第二小法廷 昭和29年(あ)3456号 判決 1955年4月20日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人吉田助右衛門の上告趣意について。
検察官は公訴提起前の被疑者に対し、刑訴三九条三項により捜査のため必要があるときは弁護人との接見につき日時、場所及び時間を適当に指定することができ、もし検察官の右処分に不服があるときは刑訴四三〇条により救済を求めることができるのであるから、仮りに所論のように本件接見の指定が起訴の日と同日であったとしても、この事だけをもって直ちに被告人の防御の準備をする権利を不当に制限したものと断ずることはできない。従ってこれを理由として被告人の検察官に対する供述が任意性、信憑力なきものとなしこれを証拠に採用した一審の手続の違法違審をいう論旨はその前提を欠くもので採用できない。(被告人の一審第五回公廷における供述によると所論検察官に対する供述は任意になされたものであることを認めるに充分である)。
所論中事実誤認をいう論旨は刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)