大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)1708号 判決 1955年10月14日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人島田武夫の上告趣意第一点について。

公職選挙法二五二条一項が憲法一五条に違反せず、かつ国民の参政権を不当に奪うものでないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)四三九号、同三〇年二月九日大法廷判決、同二九年(あ)三〇四五号、同三〇年五月一三日第二小法廷判決)とするところである。所論違憲の主張は理由がない。

同第二点について。

いわゆる選挙権及び被選挙権の停止が、公職選挙法二五二条一項所定の処刑の事実に伴って当然に生ずる法律上の効果であって、特に何らの手続を要するものでないことについても亦、当裁判所の判例(昭和三〇年(あ)一九一三号、同年一〇月五日第二小法廷決定)とするところである。所論違憲の主張は理由がない。

同第三点について。

所論第一審裁判官浜守竜が、本件第一審第一回公判の開廷前に本件被告人を別件稲沢盛之助に対する公職選挙法違反被告事件の証人として尋問したこと、及びその尋問事項が本件の訴因第一に関するものであることは、右の別件記録によると所論のとおりである。しかし、この一事を以て直ちに所論のように刑訴二五六条六項、二九六条一項、二〇条六号、七号の諸規定の趣旨と相容れないものとは解しえないばかりでなく、第一審の裁判官が事前に事件の知識を有していたからといって、その裁判官のした審理が憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということのできないことは当裁判所の判例(昭和二八年(あ)二三九二号、同年一〇月六日第三小法廷判決参照)の趣旨とするところである。それ故、論旨は採用できない。

同第四点について。

所論は単なる事実誤認、法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例