最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)1948号 決定 1955年12月23日
本籍
舞鶴市字堀上一三七番地
住居
京都市中京区西の京内畑町南部二〇番地 東スゞ子方
セメント空袋売買業
野村欣吉
明治三二年九月一六日生
右窃盗並びに賍物故買被告事件について昭和三〇年五月一六日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人岸達也の上告趣意第一点について。
論旨は判例違反をいうが、所論の事項は原判決の何等判断していないところであり、従つて原判決には所論のような判例違反は存しない。なほ、記録によれば、所論各証拠については被告人の同意があり、適法な証拠調がなされていること記録上明らかであるから法令違反の点もない。
同第二点について。
論旨は原判決の違憲をいうが、所論の事項は原審で主張なく原判決の判断しない事項であるから上告適法の事由とならない。なほ、第一審判決は、補強証拠として被害者の被害届その他の証拠を挙げているから唯一の自白によつて有罪認定をしたものではない。
同第三点について。
所論は単なる法令違反の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なほ、原判決は前科の事実を認定していないのであるから、所論のように累犯加重に関する法条の適用を示さないのは当然である。
被告人の上告趣意第一点について。
所論は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なほ、記録によれば、原審は検察官の控訴趣意書を受け取つた後速かにその謄本を被告人に送達しなかつた違法があるけれども(刑訴規則二四二条違反)、弁護人においては右謄本の送達を受け答弁書を提出し被告人のため充分防禦の措置を講じているのであるから、右違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
同第二、三点について。
所論は単なる量刑不当の主張であつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても、本件につき刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により主文のとおり決定する。
この決定は、裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)