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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)4629号 判決 1959年7月03日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人諌山博の上告趣意第一点について。

しかし原審が確定した事実関係によれば、本件被告人らの所為は、三井鉱山株式会社三池炭鉱職員労働組合員にして同会社三池鉱業所勝立売店長たる森下博が、同会社三池炭鉱労働組合の役員及び委員の選挙に際し同会社の指示により右三池炭鉱労働組合員たる同売店従業員の一部の者に対し、被告人らの対立候補に投票を依頼し選挙干渉を行ったのではないかと思惟し、右森下を詰問し、会社の命令による選挙干渉の事実を自白させるため、多数の組合員を動員し、右森下及び同人を救出に来た同じく三池炭鉱職員労働組合員にして同鉱業所旭町売店本部係員たる木下正信の両名を取巻き、スクラムを組み旋回デモを行い、吊し上げをなし、もって森下に対し会社の命令による選挙干渉の事実につき執拗に自白を迫り、右両名に傷害を加えるなどしたというのであって、右被告人らの所為は憲法二八条及び労働組合法一条二項にいう如き、三池炭鉱労働組合所属の労働者が使用者たる三井鉱山株式会社との間において、労働条件その他につき勤労者の団体交渉その他の団体行動権の行使としてなした行為に当らない(昭和二四年五月一八日大法廷判決・刑集三巻六号七二二頁参照)。されば本件につき憲法二八条及び労働組合法一条二項、刑法三五条が適用あるものとし又は適用あることを前提とする論旨はすべて採用することができない。

第二点について。

しかし本件において、使用者たる三井鉱山株式会社が三池炭鉱労働組合の役員及び委員の選挙に際し、森下博に指示命令して論旨主張の如き選挙干渉を行わせ、もって被告人ら勤労者の団結権を侵害したというような事実は原審の認定していないところであるから、本件被告人らの所為をもって団結権擁護のための正当な組合活動であるとする論旨は前提を欠き採用することを得ず、その余の論旨は単なる法令違反及び事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

第三点及び第四点について。

本件被告人らの行為をもって、森下博の団結権侵害に対し、団結権を防衛するためになした行為であるとする論旨の採用し難きことは前述のとおりであり、本段論旨は単なる法令違反及び事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

第五点及び第六点について。

所論は単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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