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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)701号 判決 1958年5月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人阿部直蔵の上告理由第一点について。

記録によると、上告会社に対する訴訟関係書類の送達は登記簿上その本店所在地である大阪市城東区関目町二丁目二四番地を送達場所としてなされていたが、その後上告会社の移転先不明の理由で書類が郵便官署から返戻されその送達不能となつたこと、その後上告会社代表者竜城房之介の届出による右代表者の住所西宮市苦楽園二番町一〇五番地を送達場所として訴訟関係書類の送達を了していたが、同所を送達場所とする書類が同人の転居先不明の理由で郵便官署から返戻され再び送達不能に帰したこと、上告会社代表者は右会社事務所の移転送達受取人の転居に際してその通知届出を訴訟関係人になす措置にもいでなかつたものであること(被上告人ないしその訴訟代理人が所論の如く右移転先等について故意に不実の上申をなし公示送達申立をなすに至つたものであるとの点についてはこれを確認すべき資料もない)が明らかであるから、第一審裁判官がその送達を為すべき場所を知れないものとし被上告人の申立に基いて公示送達の方法によりこれをなすべき旨を許可したことは違法でないのみならず、上告会社が上訴期間を徒過する結果に至つたとしてもそれが上告会社の責に帰すべからざる事由に基くものともなし難いのであつて、此の点に関する原審の判断は結局相当であり論旨は理由がない。

同第二点について。

記録によると、原審がその判決言渡期日を当事者に告知し呼出した事迹が認められない。けれども、控訴が不適法でありその欠缺が補正し得ない場合控訴審が口頭弁論を経ず判決を以てこれを却下することを得るのは民訴三八三条に明らかであつて、かかる場合には控訴審はその判決言渡期日につき当事者の呼出手続をなすことを要しないものと解するのを相当とする。されば原審の判決手続に所論違法なく論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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